なぜそうなるか

「シロアリの無料点検」から始まる契約に、自治体が注意を出している——東京都は「シロアリの無料点検に伺います」と告げて訪問した事業者に業務停止を命じていました

ある日、玄関のチャイムが鳴る。作業服の人が立っていて、近くで工事をしているので、ついでに床下を見てあげますと言う。

無料だというので、断る理由が思いつかない。しばらくすると、床下の写真を見せられ、このままでは家が傷むと告げられる。

その場で工事を勧められ、書類に名前を書くよう促される。考える時間がほしいと言いにくい空気になっていく。

こうした流れについて、自治体の消費生活センターは以前から注意を出しています。シロアリの駆除や床下の換気扇、調湿材といった言葉が、相談の中に繰り返し出てきます。

そこで、東京都が業者に業務停止を命じたときの発表、堺市の「住宅の点検商法にご注意」の頁、筑西市が載せている茨城県消費生活センターの緊急情報を開き、書かれていることを並べました。

駆除業者を選ぶための記事ではなく、料金の相場も扱いません。手元の点検や契約がどの決まりに当たるかは、お住まいの地域の消費生活センターで確かめてください。

この記事でわかること
・堺市は、点検を口実に不安をあおって高額な契約をさせる手口を「点検商法」と呼んでいる
・東京都は、「シロアリの無料点検に伺います」と告げて訪問した事業者に、6か月の業務の一部停止を命じている
・その発表は、勧誘の目的を告げなかったことや事実と異なることを告げたことなどを、特定商取引法の条項と並べて挙げている
・茨城県消費生活センターの事例では、業者が畳をあげて床下の点検を始め、殺虫剤を撒き始めていた
・3つの自治体とも、その場で契約しないこと、簡単に点検させないことを勧めている

自治体は、どんな手口を「点検商法」と呼んでいるの?

「点検商法」という言葉は、どういう意味で使われている?

堺市の頁は、点検を勧めて不安をあおり、高額な契約をさせる手口だと説明していました。

堺市の「住宅の点検商法にご注意」の頁は、冒頭がこの一文です。

「近所で行う工事のあいさつ」などを口実に突然訪問し住宅の点検を勧め、うその報告などで不安をあおり高額な契約をさせる手口を『点検商法』といいます。

続けて、次の一文が添えてあります。

場合によっては勝手に点検を始めることもあります。

同じ頁に載っている相談の一つは、床下の話でした。玄関先の汚水升を勝手に開けられたあとの流れです。

さらに家に上がり込み、「床下の湿気がひどいので、床下換気扇の設置やシロアリ駆除が必要だ」と、契約を迫られた。

入り口は屋根や汚水升でも、話が床下とシロアリに移っていく形が、この相談には書かれています。

東京都が業務停止を命じた事業者は、何をしていたの?

実際に処分を受けた事業者もいるの?

います。東京都は令和3年10月26日、無料点検を口実に訪問していた事業者に業務の一部停止を命じていました。

東京都の発表の書き出しです。

東京都は、無料点検と告げて消費者宅を訪問し、「このままにしておくと家が壊れる」などと不安をあおり、住宅の床下等リフォーム工事を勧誘していた訪問販売事業者に対し、特定商取引に関する法律に基づき、6か月の業務の一部停止を命じ、違反行為を是正するための措置を指示しました。

発表の「勧誘行為等の特徴」には、訪問のときの言葉がそのまま並んでいます。

「シロアリの無料点検に伺います。」などと告げて消費者宅を訪問し、「雨漏りがしている。」「床下の梁や土台を支える柱がひび割れしている。このまま放置しておくと、大きな地震でもあれば倒れたりする危険性があります。」「床下に湿気があるので、調湿材を全体に撒く必要がある。」などと告げて、リフォーム工事の契約を勧誘する。

支払いのさせ方も、特徴の一つです。

契約日当日に現金での即日支払いを求め、これを履行させるため、消費者の意に反して、消費者を金融機関に連行する。

「シロアリの無料点検」は、訪問の口実として使われていたと、東京都の発表は読めます。事業者の名前も発表に載っていますが、この記事では挙げていません。

法律のどの条項に当たるとされたの?

発表では、不適正な取引行為ごとに特定商取引法の条項が添えられています。この記事の表は、行為の中身を短くまとめ、条項は発表の書き方のまま写しています。

発表が挙げた行為(当方の要約)発表が挙げた条項
無料点検と告げて訪問し、工事の勧誘が目的だと明らかにしなかった第3条 勧誘目的不明示
すぐに工事の必要がないのに、事実と異なることを告げた第6条第1項第6号 不実告知
期間内にクーリング・オフされたのに、返金を不当に遅らせた第7条第1項第1号 債務履行不当遅延
断られても、迷惑を覚えさせるような仕方で勧誘を続けた省令第7条第1号 迷惑勧誘
代金を払わせるため、意に反して金融機関に連れて行った省令第7条第6号ロ 意に反する金融機関への連行
東京都内でこの事業者について寄せられた相談の数も、発表に載っています。令和3年10月25日時点で、令和元年度から3年度までの合計が14件、相談した人の平均年齢は約71歳(43〜96歳)です。

茨城県の相談事例では、何が起きていたの?

断ろうとしても、作業を始められてしまうことはある?

筑西市が載せている茨城県消費生活センターの事例では、検討したいと伝えたあとに業者が殺虫剤を撒き始めていました。

筑西市の頁の書き出しは、情報の出どころを示す一文でした。

茨城県消費生活センターからの消費生活関連の緊急情報をお知らせします。(令和6年6月27日)

相談の概要は、屋根の話から始まります。

その後「屋根は問題ないが、床下は危ない」と言って、部屋の畳を勝手にあげ、床下の点検を始めた。

その先が、この事例のいちばん重い所です。

「シロアリ駆除をしたほうがいい」と言われ、「検討したい」と伝えたが、業者は殺虫剤を撒き始めた。

「検討したい」と伝えたあとに作業が始まっている点は、堺市の頁が書く「勝手に点検を始めることもあります」と重なります。

自治体は、どうするよう勧めているの?

点検を持ちかけられたら、どうすればいい?

3つの自治体とも、簡単に点検させないこと、その場で契約しないことを挙げていました。

東京都の発表の「消費者へのアドバイス」です。

訪問してきた事業者から「点検させてほしい」と言われても、簡単に応じないようにしましょう。

同じ段落には、工事を勧められたあとの動き方もあります。

また、点検の結果、工事を勧められても、その場ですぐに契約せずに、家族や身近な人に相談し、複数の事業者から見積りをとって工事内容や金額等をじっくり検討しましょう。

茨城県消費生活センターの事例のアドバイスも、同じ向きでした。

シロアリ駆除を勧誘された場合は、すぐに契約せずに、複数社から見積を取るなど十分に検討しましょう。

堺市の頁には、点検のあとで分かることについての一文もあります。

業者が帰ったあとで問題となった部分を確認すると、異常がなかったというケースやかえって不具合が発生したというケースがあります

点検させないこと、即断しないこと、別の目で見積もりを取ることの3つが、3つの頁に共通しています。

契約してしまったあとは?

契約したあとの手続きは、この記事の主題ではありません。茨城県消費生活センターの事例のアドバイスには、次の一文がありました。

訪問販売の場合、契約から8日以内である場合はクーリング・オフを行うことができます。

手元の契約が訪問販売に当たるか、期間の数え方がどうなるかは、この記事では判断していません。消費生活センターで確かめてください。

困ったときは、どこに相談すればいいの?

東京都の発表は、相談先を東京都消費生活総合センター(03-3235-1155)と書き、同じようなトラブルは最寄りの消費生活センターに相談するよう勧めていました。茨城県消費生活センターの事例も、困った場合はすぐに近くの消費生活センターへ、と締めくくっています。

この記事で確認したこと

シロアリの無料点検と自治体の注意喚起
・堺市は、点検を勧めて不安をあおり、高額な契約をさせる手口を「点検商法」と呼んでいる
・東京都は令和3年10月26日、「シロアリの無料点検に伺います」と告げて訪問していた事業者に、6か月の業務の一部停止を命じた
・その発表は、勧誘目的不明示・不実告知・迷惑勧誘・金融機関への連行などを、特定商取引法の条項と並べている
・茨城県消費生活センターの事例(令和6年6月27日)では、「検討したい」と伝えたあとに業者が殺虫剤を撒き始めていた
・3つの自治体とも、簡単に点検させないこと、その場で契約しないことを勧めている

よくある質問

無料の点検を受けるだけなら、問題はありませんか

今回読んだ3つの頁は、点検そのものの良し悪しではなく、点検のあとに不安をあおって契約へ進む流れに注意を出していました。東京都は「点検させてほしい」と言われても簡単に応じないよう、茨城県消費生活センターは突然訪問してきた業者には安易に点検させないよう書いています。

床下の写真を見せられたら、本当に傷んでいるのでしょうか

この記事では判断できません。堺市の頁は、業者が帰ったあとで確かめると異常がなかったケースや、かえって不具合が出たケースがあると書いていました。別の事業者の見積もりを取るよう、3つの頁とも勧めています。

住んでいる地域の注意喚起は、どこで見られますか

今回読んだのは、東京都・堺市・茨城県消費生活センター(筑西市の頁)の3つだけです。お住まいの都道府県や市区町村の消費生活センターの頁を開いてください。

この整理が変わる条件


出典

点検を持ちかけられたら、その場で決めずに、お住まいの地域の消費生活センターの案内を開いてください。

当方が上の出典を引いて確かめた日:

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